日本財団 図書館


 

037-1.gif

図6 末期癌患者の抗鬱剤使用前後のSDSによる比較(71歳)

 

告知の過程において、臨床司牧師と面接し、一時は心が和んでも、一人になると憂鬱な気分になるのが当然であるが、そのようなとき、鬱の状態を図6のようなSDSテストで評価して、鬱の傾向がひどいと判断される場合は、状態に応じて抗鬱剤を使用するとSDSテストのスコアが改善し、効果の見られる場合もある。
表1は共同研究者、日野原の訳によるオスラー博士講演集『平静の心』の中に記載されている医学生のためのベッドサイドライブラリー2)で、オスラーが10冊の本をあげ、医学生が医学の実地教育のみでなく人文教育の必要性を述べているが、特に緩和医療に携わる者にとっては必要なことと考える。
承知のように、病院のルーツはヨーロッパにある中世の修道院であるが、修道院のルーツの一つは、写真1にみるごとくいまから1500年前に創立されたイタリアのモンテカッシーノ修道院である。わたしはここに数日間滞在し、ゆっくりと医療の原点を考える機会に恵まれた。
このモンテカッシーノ修道院は、ヨーロッパ全土の教育や文化に著しい影響を及ぼした修道院で、この修道院がなかったらヨーロッパは現在でもアフリカとあまり変わりがなかったという説もあるほどである。

表1 医学生のためのベッドサイド・ライブラリー

037-2.gif

モンテカッシーノ修道院の創立者は聖人ベネディクトであるが、この修道院の残した文化的遺産の恩恵を現在われわれは医療の中でもさまざまな面で受け継いていると考えるが、聖ベネディクトは次の二つの思想を伝えている。
一つは、日々死を眼前に思い浮かべながら暮らすこと、一つは、常に他のものに対し自分のもてる最高のものを提供すること、である。
現在、病院やホスピスでは治療の一部として音楽療法を取り入れているところが増加しつつあ

037-3.gif

写真1 病院のルーツとなったイタリアのモンテカッシーノ修道院

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION